結論から言うとストックオプションの権利行使益などと言う未実現の架空の経済的利益をでっち上げた(他の表現が見当たらない)当局に対する戦略の誤りであろう。それは権利行使、即売却をした者がほとんどであったために、あたかも権利行使をすることにより経済的利益が発生したように誤解された結果であろう。また国税当局もそのように思いこんでいたものと思われる。 |
国税不服審判制度と裁判制度の基本姿勢の差?
そしてもう一つの誤りは国税審判所の裁決を待たずに訴訟に持ち込み、架空の経済的利益があったとする国税当局の主張を認めた上で、給与所得か一時所得かと的外れの裁判を行ったことであろう。ストックオプションの本来の目的など本質を検討すれば、権利行使時の時価評価による含み益がその企業の年間売上金額の数倍となるようなものを、精勤による結果などと思い込まなかったであろう。 |
国税不服審判所・・・・・総額主義、国家の基盤をなすものであり公平が大前提になっている。そしてその裁決は国税当局に対しては絶対的なものであり、国税にとってたとえ不利な裁決が下っても以後はその裁決に従わなければならず、また訴訟に訴えることもできない。また、審判官は調査不十分であったり証拠書類などの収集が不十分な事件の場合は再調査ができる。しかしその再調査により訴えている納税者が訴えている事実より不利になる処分はできない。 |
国税通則法97条(審理のための質問、検査等) |
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担当審判官は、審理を行うため必要がある時は、審査請求人の申し立てにより、または職権で次に掲げる行為をすることができる。
一、審査請求人若しくは原処分庁又は関係人その他の参考人に質問すること。
二、前号に規定する者の帳簿書類その他の物件につき、その所有者、所持者若しくは保管者に対し、
当該物件の提出を求め、又はこれらの者が提出した物件を留め置くこと。
三、第一号に規定する者の帳簿書類その他の物件を検査すること。
四、鑑定人に鑑定させること。 |
国税通則法98条−2(裁決) |
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審査請求が理由がある時は、国税不服審判所長は、裁決で、当該審査請求に係る処分の全部もしくは一部を取り消し、またはこれを変更する。ただし、審査請求人の不利益に当該処分を変更することはできない。 |
国税通則法102条(裁決の拘束力) |
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裁決は関係行政庁を拘束する。 |
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裁判制度・・・・・・・・・・・(この事件で私が感じた主観) |
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当事者主義であり、主張を起こしている部分のみの提出された証拠書類で審理され結論が出されている。
その結果、脱税を推奨したり、木を見て森を語るような、会計処理や諸税と矛盾だらけの結論が堂々と 出されたのであろう。税法を熟知していない裁判官(あるいは主張にない部分には触れられないのか) と弁護士が、詭弁を弄した国税の言うがままに導かれた結論であろう。 |
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国税不服審判所の人事が国税の中で行われているので、同じ穴の狢(むじな)と思われているようであるが、国税審判官等、税のプロフェッショナルの集団で、知識、品格ともに素晴らしい人たちであり、その使命どおり冷静に中立的立場で職務を遂行している人たちである。
国税裁判で納税者の逆転勝訴は皆無に等しいといわれているが、国税不服審判所で十分な資料収集と審理が行われ審判所の網を通過した後の数値であり当然のことである。しかし審判所での逆転裁決は例年相当数に上っている。
国税不服審判制度の見直しが言われているが、私には制度改革が必要ではなく国税不服審判制度のPRが必要であり、かつ国税不服審判所の裁決がなければ裁判ができないようにする必要があると思われる。 |
この事件も国税不服審判官が再調査し、資料を十分収集して審理していれば、少なくとも脱税を容認したり、何十億円の株式の売却益と1万円前後の通勤費を同じレベルで比べたり、株価の値上がりをストックオプションを与えられた者の精勤による結果などと言うような裁決文は作成されなかったと思われる。ましてや国の徴税システムの根幹である源泉徴収制度の危機を招くようなことはしなかったであろうと思われる。 |