ストックオプションの課税問題

給与所得と株式等の譲渡による所得の複合所得であり、それぞれ課税をすべきである 
   ストックオプションをめぐる一連の裁判において、平成14年11月26日東京地裁民事3部藤山雅行裁判長に続き、平成15年8月26日東京地裁民事2部 市村陽典裁判長はストックオプション権利行使益を一時所得であるとし、国の主張する給与所得とする課税処分を取り消す納税者勝訴の判決を下した。
 しかし、平成16年1月21日横浜地裁  川勝隆之裁判長に続き、平成16年1月30日東京地裁 菅野博之裁判長は給与所得にあたるとして課税処分は適法との判断を示した。
 いずれも、それぞれにより控訴されている。
なぜ、このような現象が生じたのか考えてみる。
ストックオプション制度は元々海外(米国)で発達し、日本では1997年6月の商法改正で全面解禁された。
 それまでの取り扱いが一時所得とされていた。 
   所得税法はその所得を10の所得に区分されている。利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得の8つの所得、および一時所得と雑所得である。つまり8つの所得に該当しなければ一時所得を含む雑所得であり、その所得に一時性があれば、一時所得である。
雑所得に該当するかどうかの判断ではなくその他の所得に該当しないが確かに所得であれば雑所得である。
  そして、発生原因、担税力等を配慮し課税方法を定めている。たとえば退職所得は過去の勤労の対価でありながら給与所得とはせず別に退職所得とし、退職所得控除と所得の2分の1を課税対象としている。また、企業年金も労働の対価でありながら雑所得と定めている。
 さらに所得税法89条では山林所得をその長期に渡り発生したことから5分5乗という課税所得の算出を行う。また、変動の激しい所得については平均課税を定めている。
  この点をふまえて、なじみの無かったストックオプションによる利益を一時所得と判断したものと思われる。
自主申告しか補足手段の無かったストックオプションの利益であり、その全貌も理解されないままに一時所得と指導されたものと思われます。
  したがって、窓口でじっくり相談をし、いったんは株式の譲渡による所得と指導を受けたものもいる
  
A=付与価格  B=付与時の時価  C=権利行使時の時価  D=売却価格
 A〜Bは給与所得である。 B〜Dは運用益である。
 所得税法36条(収入金額) その年分の各種所得の金額の計算上収入金額または総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
 2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該権利を享受するときにおける価額とする。
と定められている。
 つまり、権利付与されたときに経済的利益が発生しており、そのときに付与価額と時価に差額があればそれは給与所得である。付与価格と時価が同じであったなら、0円の経済的利益である。
  株式等を取得する権利を与えられた場合の所得の収入すべき時期(所得税基本通達23〜35共−6−2) この通達は一連の訴訟が開始された後の平成14年に通達されたものである。
  また、法36条に抵触しており、立法しなければ憲法に言う租税法律主義に違反していると思われる。
 以上から、株式を取得する権利を付与された日が、経済的利益を収入とすべきであり、その後は取得した資産を、自己の危険と責任の基に運用しているのである。
 精勤により株価が上昇するなんて、投資家なら誰一人考えていないのではないだろうか?
 精勤により株価が上昇するなら、バブルのはじけも無かっただろうし、現在のような不景気や株価低迷は無かったであろう。
    社員持ち株制度は給与か、?

   
ストックオプションが給与なら社員持ち株制も給与か?ストックオプションが一段落したら遡及して更正しかねないのではないか?今回のストックオプションについての国税の対応にはそのような可能性を含んだ納税者にとっていつ納税義務が完了したのかわからない、時効が成立するまで安心のできない処理が行われたのである。
 また、右肩上がりばかりを想定して給与所得としているが株価下落にはどのような論理を組み立てるのであろうかはなはだ疑問である。
担税力等を問うなら譲渡担保や買い戻し特約などはどのような理論付けをするのであろうか?
 権利行使のための条件を満たすまでは、権利を取得していないのではないかという意見もあろうかと思われますが例外は必ず法律に定められている。
措置法29の2はストックオプションに係る非課税規定です。非課税とは言っても権利行使時は非課税といっているだけで、売却時に課税です。課税のタイミングをずらしているだけですから、非課税というより課税繰延というのが正しいのではないでしょうか。
それで、この規定は課税繰延であるとすれば、課税内容は株式譲渡課税です。
株式譲渡課税のタイミングをずらしているだけです。所得の性格を変更している規定ではありません。
   そうであるならば、措29の2の適用がないときは、株式譲渡課税が早まるだけである。
  なお、権利行使時には特別の利益が発生しているわけではなく、権利取得時と規定すべきであったのではなかろうか?